スポーツ王にも諦めないといけない日があった!!③

スポーツの話

前回の続きです。

 

久しぶりに会った旧友のみなみ。にしまさんの家でお酒を飲みながら思い出話に花を咲かせるが、共通の話題である野球の話をした所、みなみは急に声を荒げました。

一体どうしてしまったのだろう・・・・。確かにお互い大人になったというのは間違いは無いのだが、こんなにも恐ろしい顔のみなみを見たのはこれまでに一度も無く、初めてでした。

もぉ昔のままの関係ではいられないのだろうか・・・。

周りの友人達が今何をしているのか、地元に帰りこの4日間で調べたのだが、どれもあまり良い評判を聞かない。所詮これは噂に過ぎないが、このみなみに於いても若干の黒い噂が流れていることが分かりました。遊び仲間のひがしぐちまでも消息不明でしかも家は売りに出されている・・・・この町は一体どうなってしまっているのでしょうか。田舎の人間の噂を信じるか信じないか、自分でしっかりと見極めないといけない。

 

みなみが声を荒げた後、気まずい雰囲気が流れるにしまさんの部屋・・・・。

にしま「・・・・・」

みなみ「・・・・・」

 

重苦しい雰囲気のまま時間だけが過ぎていった・・・。

3分間・・・・互いに色々と考えていた・・・・。

煙草に再び火をつけたみなみがついに口を開いた・・・。

 

みなみ「・・・・そういえば昔さ、川に流されるにしまの青い自転車をみんなで眺めてたよな。」

にしま「・・・あったなぁそんなことも。」

にしまさんの部屋の天井の裸電球を見ながら、煙草を吹かす・・・・

みなみ「あの頃は楽しかったなぁ・・・。・・・けど俺はね・・・あの日に関して言えば・・・悲しかった・・・・。きたの達は笑ってたけど、にしまがあのおばちゃんに買ってもらった自転車を気に入ってる事を知ってたからな。」

にしま「…」

みなみ「……秘密基地にあるあの自転車を直すには金が要るよな…。」

にしま「フレームが曲がって欠損もひどくて直せないってチャリ屋のおやっさんに言われただろ。」

みなみ「…車に乗る事も、ご飯食べることも・・・」

にしま「なんだよ…。」

みなみ「酒を飲むことも、場所を借りることも、犬を飼うことも、ただただ何もせず生きることも……日本人で生まれてきたからには、金が要る仕組みになってるよな…。」

にしま「いや、それは分かるよ分かってるけど。」

みなみ「だから俺達はある程度は自分の責任で稼がなくちゃいけない。金が無いまま虚しく過ごすことなんて駄目だ。スポーツで食っていくことはお互いに出来なかったんだから、普通の仕事で社会貢献して、お世話になった人へ恩返ししながら働くしかない。じゃあ・・・まずはそうだな・・・2人で稼いだら駅のうどん屋さんで飯を食おう。地域還元だ。」

にしまさんは場所を変えて、なんとか自分の気分を変えたかった。

にしま「みなみ、おばの自転車の話や、金が無い話貧乏の話をされると今の俺はどれにしてもきついわ、他の話をしよう。久しぶりにどっか行こう、気分変えて外へ。」

再び時計を見るみなみ・・・・。

 

みなみ「すまん…行きたいのは山々だがご飯を食べてる時間は無い…3分後にここに来る後輩の車に乗らないと、次の仕事に間に合わない。本当は・・・もっと思い出話をしたかったんだけど、メインは俺の会社ににしまが入社してくれるよう、…説得しに来た。無理にとは言わないけど…前向きに考えてくれないか、スポーツが出来なくなった今の俺達に何が出来るか、もう一度だけ真面目に考えて欲しい。俺には本当に時間が無くて、本当に無くて…申し訳ないけど…、今俺が無一文のにしまにやってやれる事って、少し荒いように捉えられたと思うけどこれくらいしかない無いんだわ。」

にしま「みなみが言いたいことはもぉ分かったよ。」

更に続けてみなみは話し始める・・・・・。

みなみ「もぉこの部屋を出た後は、あんまり会う時間も作れそうにない…。決して思いつきではなく、普通にこれから長い間相棒と一緒に仕事するのも悪くないんじゃないかと思ってしまって。…もしにしまがこれから一人でなんかするって言うなら俺が金を貸してやるよ、でももし全てを辞めた今、何もしない、行動をおこさないって言うなら、それははっきり言って無駄な時間だ。元柔道家として間違ってる。俺が言ってることを他の日本中のにしまの仲間が間違ってると言ったとしても、これだけは「親友」の意見として強く言わせて貰いたい。もし後者であるなら俺と一緒にやらなきゃ駄目だってにしま…。選ばなくていいんだって…。もぉ傍に、きたのやひがしぐちは居ないから、今度は2人で何でもやらなきゃいけない。誰も支えてくれない…たった2人になってしまったけど。」

その時、にしまさんの中で何かが吹っ切れた・・・・。

 

みなみ「にしま…もぉ俺は行かなきゃいけない、頼むから託児所の頃からの親友の俺のことを信用して欲しい。…決して血は繋がっていないけどずっと一緒だっただろう。大馬鹿をやって楽しい時も、野球でサヨナラ決めて嬉しい時も、親が忙しくて、迎えに来ないとても悲しい夜も。寒い日だって2人で毛布にくるまって一緒にいたじゃねぇか…。」

俺は決めた…。というか、みなみが来た時にはもぉ、…これしか無い、選ぶ必要は無いと悟っていたんだ…。何の仕事をやるのかなんて事はどうでもいいとこだ、みなみがここに来たという事はもぉ…本当の意味で今までの全てを捨てて、これからは全身全霊で向き合わなきゃいけない。大人になり、地元も俺の周りの人間達が変わりつつある、その異変を早い段階でみなみが感じてる。みなみはそれを俺に伝えるためにここに来た。そうじゃなければ、ただ俺の顔だけを見に、思い出話をするためだけの為に、こんな所まで来ないはずだ。

にしま「…みなみお前、時間がないのによく喋るなぁ。分かったよ、行けば良いんだろ。明日な。早くいけよ、仕事に間に合わねぇだろ。お客さんまたすなよ。」

みなみ「にしま!ありがとう!詳しい話は全て明日だ!明日に回す!明日必ず待ってるから!明日からまた一緒だな!入社祝いに自転車買ってやるから!今だったら何でも買ってやれる!」

にしま「そんなもん要らんわっ!祝いなら本当に俺が欲しいものを買ってくれ!」

ガチャ!みなみは一瞬だけニコッと笑いましたがすぐに真顔に戻り、勢いよく部屋から出ていきました。

 

待てよ…よく考えたら俺は車もないし、バイクもない……。…全然移動手段がない…電車賃はみなみがくれたけど…バス代がないし駅までどうやっていこう…。みなみが言ってることは合ってるわ!

慌てて部屋から飛び出すにしまさん。

にしま「やっぱ自転車要るわっ!みなみ!買ってくれ!今買ってくれ!」

追いかけるにしまさん。

にしま「自転車屋のおやっさんとこの端に転がってる壊れそうなやつでいいからっ!」

裸足で外へ飛び出すにしまさん。

玄関を開けると黒いセダンがものすごい勢いでにしま家の前から走り去っていきました。

にしま「みなみっ!俺スーツ持ってない!靴もない!ホントはこれしか道が無いって分かってたけど…スーツ持ってないから躊躇ってた!スーツ持ってないって恥ずかしくて言えなかったんや!半袖短パンで行くからな!よろしく!別にいいだろ!服装で人って判断されないよな?!面接落ちないって言ってたよな?!みなみー!!」

大声で叫んだが、とっくに車は走り去っており、近所の人から変な目で見られるだけだった。

大声の上にズタボロの服・・・・、誰がどう見ても怪しくってしょうがない・・・。

 

近所のおばさん「あら?にしまくん、こんにちは。帰ってきたの?」

にしま「…あっ、お久しぶりでーす。」

近所のおばさん「今日も走るの?」

にしま「いや、えーっと…あの…はい…。…ちなみに明日の早朝も駅まで走ることにしてます…。」

近所のおばちゃん「あーそうかねー、昔からスポーツマンだねぇ、にしまくんわ。頑張ってね。」

 

あまりにも大きい声を出しすぎて、顔なじみの近所のおばちゃんに声をかけられてしまった…。

しかし、一度道着に袖を通した者として嘘をつくことは出来ない。今日から再びランニングを再開することにした。

 

 

 

 

よく仲間内で地元が好きかという質問をすると、大抵の人間はなんやかんやで地元が良い、地元は楽と言います。

しかし、何故かにしまさんは全く好きではないと言います。即答で全く好きではないと言います。

 

にしまさんの地元はスポーツが盛んだった為、子どもの頃からあらゆるスポーツをやっており、そのおかげで沢山の友人達と出会いました。それに関してはとても経験になり、良かったそうでした。

しかし楽しい反面、当然見えない厳しさが有りました。特に他人に対しての厳しい面が、異常に強かったと言っていました。

全員非常に厳しい環境下で育った為、悲しみが分からない人間や思いやりが著しく欠落した人間が自分の周りにはかなり大勢居たと言っていました。・・・あのみなみでさえもそうでした。全員同じ教育を受けています、根っこの部分は全員変わりません。

「お前ら全員悪人だ」と周りに言われても仕方がないとよくにしまさんは言います。なので他の人間がみなみの事を悪い奴だと言っても、それについてにしまさんは一切否定はしません。みなみの悪事や性格を知っているからです。そういう所にまで入り込むと本当にキリが無く、大人になっていますので逆にみなみにやられる可能性があります。そんな所に助け舟は出せません。

逆に昔のにしまさんの事を悪い奴だと周りが言っても、それはそう思えばいいでしょう自由にと言っていました。どうせどこからも助け舟は来ないのだから、一人で全てを完結させる。

 

 

私が脚色し伝わりにくい部分を文で書けるよう変更しましたが、引退〜就職の期間の話はここまででした。

かなり長いお話でしたが、要約するとにしまさんが実家に帰った所、既に身近で成功者と堕落者が出ており、過去の栄誉にすがっていてはこれから生きていかれない、死が待ってると、友人のみなみという男からかなり強い忠告(警告に近いもの)を受けた。という話です。

友人と仕事を始めてこれからどうなるのか、善なのか或いは悪なのか、にしまさんのいう全身全霊と言うのは自分の体も精神の善悪もすべてを世間にぶちかますという意味です。これは序章であり、本当のガチな部分はこれから詳細を詳しく聞かなければわかりませんが、青い自転車の話で再びブルー(青だけに)になってしまったにしまさんの調子が戻り、話を聞くことが出来ればこの続きを書きます。3部にも渡る長文読んで頂きましてありがとうございました。

にしまさん「俺が地元に居ない間、環境がどえらく変わっとんたんやでぇ!休んでたら怒られるし、全然良いことないでぇ!また見てね♪!」

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