スポーツ王にも諦めないといけない日があった!!②

スポーツの話

前回の続きです。

 

 

柔道を引退し、家で昔録画したお笑い番組を見ていた所、急にスーツ姿のみなみがやってきました。

久々に旧友のみなみと出会い、2人で懐かしみながら部屋でゆっくり煙草を吸っていました。

 

にしま「・・・よく帰って来てるってわかったな、誰にも言ってないのに。」

みなみ「俺はにしまがやることは全部分かってる。相棒だからな。昔からガチャピンとムックのような関係だろ。」

にしま「例えがポンキッキ・・・。なんかみなみ、前もそんな事を言ってたような気がする。」

みなみ「・・・えっそうだっけ?気のせいだろ。」

 

うー-ん・・・・俺が地元に戻ったことを、誰かがみなみに伝えてるな…。

もしかして伝えたのは雀荘の親父か?・・・・。みなみはあそこに出入りしてるのか・・・・。

みなみ「しかし・・・・なんだよにしまその格好は・・・。Tシャツの首周りがダルッダルになってるじゃあないか。子どもの時にインフルエンザで熱が出た時にそうなった事を思い出したわ。にしまって今インフルエンザなん?」

にしま「アホか違うわっ!」

笑いながらツッコミを入れるにしまさん。

懐かしそうに笑いあう二人。

にしま「みなみが元気だってことは分かった。そういえばあいつ・・・・、きたのは元気?もうとっくにこの町には居ないっていうことは聞いているけど。」

みなみ「きたのは市内に出てる。飲み屋に勤めとるわ。半年前にたまたま仕事で会ったんだけど、そろそろ独立する予定だって言ってたな。」

にしま「そうなのか。やり手だなぁきたのは。」

みなみ「顔がカッコいいからな。普通に歩いててもカッコいいいからな。」

にしま「きたの・・・大して中身は俺達と変わらないくせに。」

煙草を消した所、みなみが持ってきた酒を飲もうと言ってくる。

せっかくなのでグラスを用意し、お酒を久しぶりに飲むことにしました。みなみがどのくらい飲むか知らないが、1円も家賃を払っていない居候の身なので、一緒に住んでいる親父の分も残しておかないといけない・・・。

かんぱーい

 

にしま「これ飲みやすいな。・・・あっそういえばあいつ・・・、ひがしぐちは?どこ行ったんかな?」

みなみ「ひがしぐちは消息不明だ。急に連絡が取れなくなった。」

にしま「えっひがしぐち消えたん?・・・それどういうこと?お父さんと一緒に住んでなかったっけ?」

みなみ「なんかな、子どもの頃何回も遊びに行ったあの家覚えてるか?・・・もぉ売りに出てる。不動産屋に聞いたけど詳細は教えて貰えなかった。そんなに心配なら、今から家行ってみるか?」

にしま「いや、行かん。ひがしぐちのことだ、またパチンコで金が無くなったとかでピョコッと帰ってくるだろ。どうせ俺達の中であいつが一番長生きだ、長生きするに決まってる。

2人は間違いない、と笑った。

 

ひがしぐちは町中に住むにしまさんやみなみの家から少し離れた郊外に住んでおりました。子どもの頃からとにかく武勇に優れており悪ガキで有名でした。学校では友達と喧嘩、家では一緒に住んでいるお父さんとも喧嘩が絶えなかった家庭だったそうです。

性格も、一度ふざけ始めるとストップが一切効かなくなるため、よくみんなで力を合わせて、家へ強制送還していたそうでした。

集まるととりあえずは楽しいので子どもの頃は一緒に過ごしていましたが、にしまさんはひがしぐちの事はどうも心から信用が出来ず、心の中ではどこか軽蔑していたそうです。名前の通りなのですが、考え方が自分の方角と真逆に位置しており、中立のきたのやみなみとは少し違うタイプの友達だったそうです。

みなみは煙草に再び火をつけた。

みなみ「なんか就職先にあてがあるのか?もし無いならうちに来いよ、出来高制の会社だけどな。頑張ればそこそこ貰える。明日の朝市内までスーツ着て出てこい。面接の段取りをしといてやるから。この履歴書にここの住所書いて、写真欄に何年か前に撮ったプリクラでも貼っときゃ受かるんだから。金が無いだろ?往復の電車賃渡すわ。」

みなみはポケットからお金を取り出し、履歴書と共にちゃぶ台に置いた。

にしま「プリクラ・・・それって面接する必要あるかぁ?…みなみが所属してる会社?…うーん…まぁ…ちょっと考えとくわ…。」

もう少し地元でゆっくりしたかった為、直ぐに返事をしないことにしました。

みなみ「俺の会社以外にあてがあるの?」

にしま「いや全然無いけど、これまでの人生ずーーっと柔道してたから、暫くゆっくり過ごすつもりだよ。」

それを聞いて呆れ顔になるみなみ。

 

みなみ「いやいやいやいや…にしまにしまにしまにしまっ!!にしまっ?!好きでやってたんだろう?そんな苦労しました疲れましたみたいに言うのが柔道家なん?問題はこれからどういう風に過ごすかだろ。」

にしま「別に俺が決めたルールでやってたし苦労したなんて事は一度も思ってねーわ。みなみは柔道してねぇくせに柔道家がどうとか簡単に言うな。それは志した者の心に中ある物であって、そんなに簡単なもんじゃない。柔道家という言葉に敏感なのが柔道家なんだから。」

首を傾げて考えるみなみ・・・・。

みなみ「…はい?…お前何言ってんの?・・・にしま!・・・にしま!」

にしま「わかったよ!ごめん!みなみには分からんよなっ!・・・・それよりお前、何回人の名前を連呼するんや。」

みなみ・にしま「はっはっはっは!!!」

酔いが回ってきたのか、そんなことで爆笑する2人。

 

みなみ「にしまが言ってることを久々に理解が出来なかったわ。」

にしま「理解できなくていいんよ。べつに。」

にしまさんも再び煙草に火をつけた。

みなみ「・・・そんなことよりにしま、マジな話このままプー太郎で生きていてもはっきり言ってジリ貧だぞ?きたのは今忙しいし、ひがしぐちは消息不明。にしまんとこのおじちゃんもおばちゃんも自営で、お兄さんも出世して県外なんだろ?心から頼る人間が今居ないじゃないか。また子どもの頃みたく、きたのに頼んで山菜を採らせてもらって、その日暮らしの生活を送るの?まぁ・・・俺らがよく行ってた商店も不況で閉店したから、それも出来ないけどな。」

にしま「それはないけど、今は何も考えたくない。みなみこそ野球してたんじゃないのか?評判は聞いてるぞ?凄いじゃないか。地元出る前におばさんに聞いたけど確かプロ野球の…」

みなみとは小さい頃から一緒に野球をしていた仲だったので、その話をしようと思ったのですが、その話を切り出した途端、みなみの表情が急変しました。人間の顔から鬼の形相になったのです。出会ってから今まで、みなみのこのような恐ろしい顔を見たことはありませんでした・・・。

キリッ!!!!

みなみ「にしま!…スポーツの話はもぉええ!今の俺達には関係ないだろっ!…もぉ終わったろ!俺もお前も!切り替えろよ!」

 

急に声が大きくなった為、驚いてしまい、お酒をこぼしてしまいました。

その辺に置いてあったタオルでちゃぶ台を吹くにしまさん。

にしま「おい、なんだよ急に・・・脅かすなよ。終わったって、そんな・・・。・・・みなみ・・・何があったん?俺が地元離れてる間に何があったん?教えてくれ。」

 

しまった!…、という顔をするみなみ。結局この後何年絶っても本人は話したがらないので、実際に何があったのかは分かりませんが、この時のみなみは自身が持っている火がついた煙草を握りつぶし、一気に怒りのボルテージが上がりました。

 

みなみ「・・・申し訳ない・・・・ほんとごめん・・・・。」

左腕につけている高そうな腕時計で時間を見るみなみ…。

にしま「いやまぁ・・・いいけどさ・・・。」

暫くの間、沈黙が流れる…。

・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

3分後、静寂の中、みなみが口を開いた。

 

次回へ続く・・・・・。

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