お疲れ様でございます。
コロナワクチンの三回目接種予約が完了したエイルです。
先輩のにしまさんから、今まで色々と私に話して貰ったお話の中で、一つだけ悲しい物語が有りました。
それについてにしまさんと、後輩のおかかを交えて協議を重ねていましたが、この度ブログで出しても良いと許可がおりました。ありがとうございました。
なので、今日は本当にガッツリ書かせて頂きます。
にしまさんは子どもの頃、悪ガキ集団の一味でした。滅茶苦茶悪い人間で、いたずらや悪ふざけが大好きな醜悪な少年でした。常にどうやったらみんなが面白がるか考えて過ごしていました。
もっと言えば、面白ければ何をしてもいいという考えでした。
スポーツ精神がとくに強かったにしまさんは、この時はまだ世の中の全てがスポーツ感覚であり、目に見えるもの全てが爽快に見えました。
にしまさん達のグループには秘密基地のようないつも集まる場所があり、休みの日はそこに気の合う悪ガキ集団と一緒に過ごすことがあったと言います。
メンバーは
リーダーでありイケメンの きたの
超悪ガキで誰よりも悪い坊主の ひがしぐち
相棒で野球が得意なロン毛の みなみ
そして我らがスポーツ王 にしまさん
の4人グループでした。
いつもこのメンバーでガンガン集まっていました。
ガンガン集まってはいましたが、集まればみんな常に腹が減っており、お金が無かったにしまさん達は、きたのが所有する山の木で基地を作り、そこで山菜などを収穫し、収穫した山菜を知り合いの商店のおばあちゃんに頼みこんで、お菓子に交換して貰っていました。どうぶつの森のような事をすでに子どもの頃からリアルにやっていました。むしろそういう事をやったのはにしまさん達が先なので、どうぶつの森はにしまさんが作ったと言っても過言ではありません。
時に誤って毒キノコを持ち込んでしまい、商店のおばあちゃんに怒られてしまいこともありました。
おばあちゃん「毒キノコ入ってる!!あんたたち、私を殺す気だったでしょう?!」
東・西・南・北「え”””!?」
・・・・・・・・・・・・
きたの「あぶなかったー・・・・誰が入れたん?」
ひがしぐち「おれかな?・・・・」
恐る恐る手を挙げるひがしぐち。
きたの「ひがしぐちか!!前からキノコはやめろって言ってるだろ!!あったま悪いな!!何回言えば分かるんだ!!」
にしま・みなみ「はっはっはっは!!」
腹を抱えて笑うにしまさん。
・・・・そんなようなことが日常茶飯事で起きていました。
でも楽しかった毎日・・・。結果的に変な事ばかりしているので、勿論大人達に怒られることは多々ありましたが、そういう事も含めて地域から可愛がられている悪ガキ少年グループでした。
そんなにしまさんには子どもの頃から今でも尊敬しているという、おばちゃんの存在がありました。
両親が共働きで大変忙しかった為、両親が忙しい時はいつもそのおばちゃんに面倒を見て貰っていました。
ずっと子どもの頃から根っからの可愛いキャラだったという事もあり、とてもおばちゃんから可愛がられておりました。
ある日、おばちゃんの家に行った時、おばちゃんから入学祝いで青い自転車を貰いました。当時そのようなオシャレな自転車は少なく、とても嬉しかったそうです。
とても気に入っており、本当は寝るときも風呂に入る時もサッカーをする時もずっと一緒に居たかったと言っていました。
みなみ「にしまええやんそれー、めちゃめちゃかっこいい。」
にしま「だろぉ?カッコいいよな。俺のおばちゃんに買って貰ったんよ。」
みなみ「・・・・あーあのおばちゃんかー。ええなー羨ましいなぁ。」
友人のみなみもそのデザインを気に入っており鼻高々で、出かけるときは必ずその青い自転車に乗って出かけていました。
にしま「よーし、今日もチャリで80kmだすぞー!!」
バク漕ぎをする毎日でした。
1ヵ月の月日が流れました。
にしまさんが生まれ育った町は雨が少なかったそうですが、その日は記録的な大雨で、特定地域では避難勧告が出るくらいの大雨でした。
にしまさん達に天気など関係なく、そんな大雨の日でも飽きもせず、またいつものようにみんなで集まっていました。
きたの「おいみんな!!すっげー雨だな!!こんなの初めてだ!!ちょっとみんなで橋のとこまで見に行ってみようよ!!」
ひがしぐち「いいねー!!!行こう行こう!!」
いつもの悪友達に誘われ、近くの橋の所まで行きました。
到着すると、橋下の川が濁流になっており、水かさがいつもの2倍以上になっていました。いつ鉄砲水になってもおかしくありませんでした。
ひがしぐち「おい、なんか投げ入れてみようぜ!!」
またひがしぐちの悪ノリが始まりました・・・・。
・・・・とは言え、何も持っておりませんでしたので、川に投げ入れる物が無く、困っていました。
きたの「うー-ん、どうしよかなー・・・・」
そこで・・・・天性のファンタジスタにしまが動き出しました・・・・。
にしま「・・・・よーし決めた、この自転車投げ込んでみよう!!」(まぁ・・・後で取りに行けば問題ないだろう・・・・)
きたの「マジかにしま!!」
ひがしぐち「いいねー!!にしまかっこいいぞ!!」
みなみ「・・・おい・・・・」
みなみの制止が間に合わず、こともあろうににしまさんはおばちゃんから買って貰った大事な青い自転車を放り込んでしまいました。
ザブーーーン!!!!
物凄い勢いで自転車は流されて行き、あっという間に見えなくなりました。
きたの・ひがしぐち「ひゃーはっはっはっは!!!」
腹を抱えて笑い、その場に崩れ落ちるきたのとひがしぐち。
みなみだけは気の毒そうな顔をしていました。
にしまさんがこの時の事を回想していましたが、今冷静になってよく考えてみたら、自分を含めまともな考えの人間が周りに誰一人も居なかったと言っていました。子どもながらに本当に常軌を逸していたと言っていました。
にしま「・・・・」
みなみ「おい、にしま・・・よかったのかよ・・・」
きたの達が散々笑った後、良い時間になった為、解散になりました。
ひがしぐち「いやー、にしま!!わろうたわ!!wwさすがだな!!wチャリもう一個買えばいいだけだしな!!お疲れ!!また明日!!」
ひがしぐちに関しては本気で一発ぶん殴ってやろうかと思いました。
解散した後、にしまさんは必死の形相で慌てて川に戻りました。
今から自転車を拾いに行けば!!まだ近くにあるはずだ!!!
持ち前のサッカーで鍛えた俊足を活かして猛ダッシュでさっきの川に戻り、橋を降りて半泣きで草をかき分けて水面を見ていました。
潜ったら見えるだろうか・・・・。
ザァァァァーーー!!
しかし雨は勢いを増し、にしまさんはバケツの水を常にぶっかけられているような状況でした。そして川はますます氾濫しておりました。物凄い勢いの水流で、もしも足を滑らせて川に落ちたらどうなるかわかりません。真っ暗で勿論ライト等の道具も無い為、ほぼ周りが見えません。
すると、橋の上に人影がみえました・・・・・。
みなみ「にしま!!・・・・」
にしま「・・・みなみか!!・・・」
みなみ「戻ると思ったわ!!」
にしま「・・・・なんでわかった?」
みなみ「俺はにしまがやることは全部分かってる。相棒だからな。」
にしま「みなみ・・・・よし、一緒にチャリ探そう!!」
みなみ「いやいやいやいや!!どう考えても無理だ!!明日の朝には雨が止むから!!そこまで待とう!!今飛び込もうとしただろ?!絶対やるなよ!!死ぬぞ!!」
にしま「嫌だ!!」
にしまさんはみなみに羽交い絞めにされながら陸地に戻りました。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
みなみとの捜索の甲斐あって自転車は見つかりましたが、自転車は泥と水圧によりグチャグチャになっておりました。
にしまさんは半泣きでした。
みなみ「・・・・おい・・・・おばちゃんになんて言うんだよ。」
にしま「・・・・言えない。しかもまだ乗ってる姿を見せてない・・・・。・・・・治そう。」
みなみ「いつもの自転車屋に持っていこう。」
自転車に持っていきましたが、そこの親父の話だと、フレームが曲がり欠損多数でもう治せないと言われました。
自転車屋「にしまくん、川に自転車ごと落ちたんか?事故とかじゃあないだろうね?」
みなみの言い訳でその場を逃れましたが、自転車が治らないと分かった為、家の車庫に隠しておくことにしました。
奇しくも・・・・・・それから直ぐの事でした・・・・・。
おばちゃんの訃報を聞いたのは・・・・。
通夜にはみなみ達が来てくれましたが、泣き崩れてずっと泣いているにしまさんは全く元気がありませんでした。
みなみ「にしま・・・あのな・・・」
きたの「やめとけみなみ、・・俺達が気安く声をかけれる状態じゃあないだろう。もぉ帰ろう。こんなにしま見るのは初めてだ。」
きたのとみなみの声が聞こえたにしまさんは重い口を開けました。
にしま「・・・・みんな・・・時間ある?・・・ちょっとだけ手伝ってくれないか・・・。」
ひがしぐち「なんだよ!!お前しゃべれんのかよ!人形かと思ったわ!!」
ひがしぐちだけは、マジであいつだけは許さないとにしまさんは常に言っていました。
4人はにしまさんの家の車庫にあった青い自転車を秘密基地に移動させました。
みなみ「にしま、家に置いとかなくていいのか?形見だろ。」
にしま「ここに置いとくことにするよ。」
きたの「良いけど、なんで?」
にしま「家に置いてあると悲しくなる。ここに置けばみんな居るから気が紛れるから。なんかもぉ泣きすぎて涙が枯れてしまったわ。」
今までの自分の人生であれほど悲しかった事は無かったとにしまさんは言います。
おばの事は亡くなった今も尊敬している。本当の子どもでもない自分を可愛ってくれて、自分の子どものように育ててくれた。自分はおばのように他人を愛せるだろうか。
私もこの話を聞いたときは悲しかったです。てっきり私は、おばちゃんが亡くなってしまったことで悲しかったと感じていたのですが、にしまさんは人が死ぬことは悲しくないと言っていました。
体の悪いおばが当時ネットも無い時代だった為、歩いて自転車屋さんへ行き、にしまの為にこれがいいだろうと、にしまが喜ぶだろうと青色の変わった自転車選んで買ってきてくれたこと。
そのおばの行動が当時の自分には全く見えてなかった。だから俺は橋から自転車を落としてしまったんだと。好意を踏みにじるような事をやってしまった。その事を今もずっと悔やんでいるそうでした。
その日までのにしまさんは、おばには一度も自転車を乗る姿を見せておらず、ただただ自分の遊びに没頭し、人の親切が分からず、感謝も少ない人間だったといいます。
最愛のおばが命をもって、そんなにも大事なことを教えてくれたんだから、もうそれはとてつもない感謝でしかない。その人が生きている生きていないは、もぉにしまさんにとっては関係がないのです。
人生は良い事は少なく、悲しい事が沢山あります。にしまさんは後にも先にも涙を流したことはこれっきりで、もう二度とおばの事以外では涙は流さないと決めたと言っておられました。