これまでのお話はこちら
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まとめ記事です。「きたのの会社の仲間達」を追記しました。
※ まとめ記事の下記に登場人物紹介がありますので、ネタバレ等配慮していますが、注意願います。
BAR「PEIKOH」に到着するにしま、みなみ、ハクの3人。
にしま「良い名前のBARだなぁ・・・。」
みなみ「だろう?・・なんか俺もやけに気に入ってんだ・・・。名前が良い・・・。」
ハク「扉が可愛いね!」
この古い雑居ビルではこのお店しかテナントで入っておりませんでした。かなりの老舗と思われるこの雰囲気・・・。
マスター「あら、みなみ君。ようこそようこそ。今日はお連れさんが居るね。」
白髪で髭面のマスターが私達を出迎えてくれました。ハクが働いていた喫茶オセローとはまた少し違った雰囲気のマスターでした。
ハク「少し暗いけど、おしゃれなお店!!」
にしま「なんとなく・・・居心地良いかも。」
かなりレトロにこだわった内装で、壁紙がレンガでした。この端っこに飾ってある古めかしい女性の上半身のオブジェ・・・一体いくらするんでしょうか・・・・。
にしま「・・・これは・・・骨董品???・・・・」
みなみ「マスター今日はね、俺の会社の同僚を連れて来た。」
にしま・ハク「マスター、はじめまして!!」
マスター「そうかね。まぁお酒以外何も無いけど、色んなお酒を飲んで楽しんでいってよ。」
ハク「マスター!!あの樽ってワイン?テキーラ?ちょっと飲んでみたいんだけど!!」
マスター「どうぞどうぞ。」
カウンターの隅に座る3人。
焼酎、ワイン、ウイスキーが運ばれてきました。
マスター「ごゆっくり・・・・・。」
3人で乾杯しました。
みなみ「そういえば、きたののとこがまだ揉めてるな・・・。」
にしま「・・・そうなのか、まだ収拾ついてないんだな。」
ハク「大変だよねぇ、あの会社も!!組織が大きいからね!纏めるの大変だろうなぁ!!・・・・あっこのワイン美味しい!!」
にしま(そういえば・・・・)
リュー、ポンと共に営業活動をしている時に、いきなり声をかけて来たスーツ姿の人間が居ました。リューはその青年と親しげに話していましたが、その相手はきたのの会社の人間でした。
にしま「そういえばさ、最近よくオカが昼夜問わず若い奴を連れて動いてのを見るけど、その関係かもしれないな。」
みなみ「・・・バキョウがつるんでいたのはマンダだけかと思ったら、そうでもないらしい。」
ハク「氷山の一角にすぎないって事ね!バキョウは優秀だったんだね!!」
にしま「しかし・・バキョウもきたのの会社の人間なのにな。自分の親に噛み付くなんて相当な話だよな。やられるのわかってんだろうに・・・・。」
ハク「仕組みがよく分かんないよね!!ようは会社を潰そうとしたわけでしょう??」
みなみ「そうか・・・そこから話さないといけないか・・・・。きたのの会社には、各地に無数に散らばっている小さなグループがある。うちで言ったらオーラス興業の子会社にオーラス金融があるような感じ?そういう小さなグループが沢山あるんだ。」
にしま「その小さなグループを纏めているのが、こっちで言うとチュンさんとかハツモトさんみたいな感じか。2人の下に俺達がついてるような感じだな。」
みなみ「そう言う事。その複数のグループを纏めている幹部が居る。グループの大きい小さいはそれぞれ当然あるけど、DARAのバキョウや先日アリスの店に来たリューのような人間がそのポジションにあたる。幹部になるとそれぞれが持つ派閥のような組織があって、きたのに任された場所を守りながら、自分がやりたいように動かすことが出来る人間を周りに従える事が許される。」
ハク「みなみ、でもさ会社としては向かう方向は1つなわけでしょ?・・・・・営利法人であれば、利益と社会貢献?ってことになるとは思う。普段は散らばってるけど、大きく見ると1つの会社なわけだから・・・。」
みなみ「そこが俺達と唯一違う部分。きたのの言う事聞くのは幹部の仕事。幹部の言う事を聞くのはその小さなグループの連中の仕事。きたのの言う事はその小さなグループの連中は聞かない。というか街で見かけて挨拶する事はあっても、基本的には会えない。」
にしま・ハク「はぁ??・・・・どういうこと・・。」
みなみ「それが俺達と違うんだ。不思議だろう?・・・。俺がさ、昔オーラス金融に居た時には、オーラス興業に所属してたチュンさんやハツモトさんからよくアドバイスを貰ったもんだよ。・・・要は・・・バキョウはその自分の会社の変わった風習を利用したんだ。逆手に取ってきたのの手が届かない人間を陰で動かしてたって事よ。」
みなみはウイスキーをグイっと思い切り飲みました。会社が違えばそれぞれルールも異なります。しかし、こんなにも大きく違うのでしょうか。会社を良くしたいという気持ちはサラリーマンである以上少しはあると思っていたのですが、中にはそうは思わない人間が居るということが分かりました。
にしま「・・・あーなんとなく分かった。きたのの下で育てた人間を、出先に出す。その出先では誰を社員に雇おうが、売り上げさえ纏まっていれば、社長のきたのからしたら関係ないって事か。」
ハク「あーそう言う事ね!にしま分かりやすい!!」
みなみが今日はやけにノッています。
みなみ「おう、それに近いな。酔った勢いで、もっと言うぜ?・・・・リューは実際にロンっていう相棒と一緒に店をやってる。ロンはきたのの事務所にリューを迎えに行くから何回も会って顔は分かってるだろうけど、きたのからしたら自分と繋がってるリューはともかく、ロンはどうでもいい。言い過ぎではなく、ロンが死のうが生きようが、きたのにとってはなんの意味も持たない。」
にしま「・・・序列ってやつだな。うちの親は子ども以上に孫を可愛がってるけどな(笑)・・・子どもの頃の俺をもっと可愛がってほしかったぜ(笑)」
ハク「そうよね!変なの!チュンさんやハツモトさんは困ったら話を聞いてくれるし、まだ優しい方かもね!!」
みなみ「あの大人数の中、異様に序列がしっかりしてる。因みにきたのに直接会うのは幹部以上じゃないと認められない。自分の意見が一切届かない厳しい序列があるからこそ、上に上がろうと、そう思う人間や、シビアで優秀な奴らが産まれて・・・っていうね、本当にそういうしたたかな奴らが社内にゴロゴロ居る。その中には俺達のことを良く思ってない連中が当然居るはずだ。先日会ったカンやバキョウなんていうのはハクの言う通りで、ほんの氷山の一角に過ぎない。単独ならどうにかなるかもしれないが、もしも束になって牙をむいてくるような事があったら、俺達もチュンさんやハツモトさんもポンも・・・もしかしたら会社ごとやられるかもしれない・・・。その位の勢力を持ってる会社だ。」
ボトルキープしているウイスキーが無くなりました。新しいボトルを注文するみなみ・・・。
まだ俺は、きたのの会社の全体が見えていませんでした。リューやカン、その他数人の幹部に会った事がありますが、全員人間のカラーが違い、ただ会う事が出来る連中と会っている、いや会わされているだけで、遠くから会社の表面を眺めているに過ぎないのでした。
俺達に会わせても何の問題の無い人間をきたのが選んであてがう。本当に会わせるとお互いにとって不都合や不利益が起きる社員は俺達に会わせない。そういう考え方があったとしても過言ではありませんでした。
みなみ「表現が難しいが、きたのの下には一度何かの拍子で噛みつかれると、猛毒を盛ってくるような奴が居る。バキョウのように親ですら食おうとして、俺達のことを獲物としてしか見てない連中が水面下の見えない所で動いてる。先日、きたののとこのツモリという人間に初めて会った。そいつはあまり表に出てこない。容赦しないシビアな人間だった。まだまだきたのの後ろには不可視の敵が居るってことだ。」
にしま「居るのか?そんな奴が。」
みなみ「居る。・・・絶対に居る。まだどこかで隠れてる。もしそいつらが表に出てきたら、俺達は最終的にきたのにやられる事になる。きたのが直接手を出して来ることはないが、特に幹部である奴らの前で気を抜くな、やられるぞ、本当の意味で。バキョウは実際に俺が入れた飲み屋のキャストにピンハネがデカすぎるとかなんとか適当に言って、他店に移籍させて紹介料をとってた。」
ハク「えっ・・・あの人そんな事してたの??なんできたのに言わなかったの?」
みなみは、きたのの陰に隠れて俺達を狙ってくる人間、インビジブルが存在すると言うのです。普通に過ごしていても、気に入らないと思われる。ジッとしていれば気付かぬうちに出し抜かれる。
俺達は人材を取引先に派遣して給料を貰っています。だからお金が発生するのですが、その派遣元である俺達を食い物にしようと考えている悪い奴も居ると、みなみから話がありました。でも、それは仕方がない事だというのです。
みなみ「食物連鎖のような物だ。そういうヒエラルキーの中で生きている以上、これはもぉ変えられない。バキョウのように俺達に楯突いてくるやつを一人一人見つけて倒していくしか無い。」
きたのは、俺達が生活している食物連鎖のヒエラルキーの真ん中付近に位置する者同士が揉めるのを待っていました。みなみや俺を通して、自分の会社を更に統率する目的、そして揉めたことで発生するなんらかの利益や旨みを食いつくそうとしているのです。
昔も今も激怒したきたのに逆らうことは許されませんでした。昔は俺やみなみ、ひがしくちを従え、今はカンやリュー、ツモリ達・・様々な部門の幹部を従えています。今度はそのきたのの新しい仲間達が敵となって私達に牙をむいてくるのです。
幸いオオゴトになる前にカンが動き、バキョウは倒れました。しかし・・・・もしこちらが全く動かなかったら、一体末路はどのようになっていたのでしょうか。
共に仕事をすることで、ようやくきたのと対等の位置に行けたと、勝手にそう思っていましたが、そんな事はありませんでした・・・・。
いつも、いつまでも、そのヒエラルキーを覆すことは出来ませんでした。
たかがきたのの会社の中層幹部、事実そのたった1人でさえも、俺達だけの力で抑え込む事が出来なかったのです。
続く