これまでのお話はこちら
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まとめ記事です。「地域に住む仲間達」を追記しました。
※ まとめ記事の下部に登場人物紹介がありますので、ネタバレ等配慮していますが、注意願います。
私はダマテと共に、島にある山に向かっていました。山を越えて行けばその先に上司のペンちゃんが使っていたボートがあるというのです。
そのボートの事を私はこれまでに聞いたことがありませんでした。特定の人間しか知らない秘め事のようです。
恐らく、こういう時の為に用意したもの・・・・という事になりそうです・・・・。
私は冷静を装っていますが、実はまだ動悸がして、体力は普通の人よりはある方だと思っていたのですが、少し息切れしているように感じます。精神的な問題なのでしょうか。
ハク「ねぇ、ダマテ・・・。」
ダマテ「・・・どうした?」
ハク「・・・人間ってさ、居なくなったらどうなるのかな?・・・」
ダマテ「変な事言うなよ。」
ハク「時間が過ぎれば忘れられて行くのかと思ってしまうと、どうでもよくなっちゃう。」
ダマテ「それは違うな。」
ハク「なんで?」
ダマテ「輝いて見えている人間であれば、海岸で見る夕日のように忘れる事は出来ない。そんなもんだ。忘れようたって忘れられない。・・・とにかくハク、気をしっかり持ってくれ。お前がしっかりしてくれないと、俺達は何のためにこの島から出ないといけないのか分からなくなるじゃねぇか。」
ハク「うん・・・ごめん。もう言わない・・・・。行こう・・・。」
私はなんとなく、ふと歩いてきた後ろを振り返りました・・・・。
ハク「・・・・・・・・・・」
ダマテ「・・・・どうした??」
ハク「・・・ねぇダマテ・・・・何あれ?・・・・・・」
町中に・・・炎のようなものが点々としているのが見えます・・・・。
ダマテ「・・なんだ・・・あれは・・・・。」
私達が住んでいた町中が燃えているように見えるのです。点々とした炎のようなもの・・・・・。その無数の点のようなものが動いているように見えます・・・・。
一体なんなのでしょうか・・・・。
同時に胸騒ぎがします。恐れているのでしょうか・・・・体のどこかがムズムズするのです・・・・。
ハク「・・・・」
ダマテ「・・・・なんか・・・・こっちに向かって来ているように見えるけど・・・・炎?・・・」
ハク「ねぇ・・・・あれさ・・・・・。」
ダマテ「・・・・・・」
ハク「もしかして・・・・・松明(たいまつ)・・・・・じゃない??・・・。」
その1つの点が・・・徐々に1箇所に集まりつつありました・・・。一体何が町の中で行われているのでしょうか・・・・。
この島の祭りや昔からの島の習わしに使われるのですが、その松明が動いているように見えるのです。
ダマテ「・・一体・・・この島で何が起きてるんだ??・・・・・・」
ハク「大体・・・おかしいのよ・・・・今日・・・・。」
ダマテ「え?・・・・」
私は今日仕事が終わった時点で、おかしな状況である事は分かっていました。
腕時計を確認した後に私は確信し、ダマテに話す事に決めたのです。
ハク「夜出歩かないダマテは知らないと思うけどさ、この時間って・・・・いつも徘徊してるおばあちゃんが居るのよ。今日は居ない・・・・。それどころか・・・・。今日に限って人っ子一人いないじゃない・・・・。私仕事終わってから仕事の仲間しか会ってないんだよ??おかしくない?・・・・・もし・・・・あの炎の点のようなものがさ、人であるのならまだ少しは合点がいくんだけど・・・・。でもなんか・・・・それにしても、そんなに人口が少ないわけではないよね。」
ダマテ「・・・ちなみに今日お前は誰と会った??・・・・」
ハク「社員以外には、いつも野菜くれるおばちゃんと・・・・。あと取引があった金物屋さん・・・・・。ダマテは?」
ダマテ「いつもの商店のおばちゃんと、港を管理しているおじさん。」
お互いに話した人間は数名居ましたが、擦り合わせていくと、その会話の中で共通している部分がありました。
ハク「やっぱり。会合があるとかって言ってたよね」
ダマテ「ああ、確かに言ってた。会館に集まって何かの話し合いをするって言ってたな。」
ハク「・・・それなら・・何故、私達だけ呼ばれてないの??・・・全員じゃないにしても、会社の責任者として最低でもお父ちゃんかペンちゃんのどちらかが呼ばれる筈だけど・・・。」
ダマテ「おかしな話だな。同じ地区な筈なのに。」
そんな話をしていると私はまた後ろが気になり、再び後ろを向きました。
ハク「・・・!!!!・・・・・」
ダマテ「ん?・・・・・」
ハク「ねぇなんかやっぱりこっちに向かって来てない?・・・・かなりの数が猛スピードで・・・・。」
先程散り散りになっていた炎は殆どが一箇所に集まり、私達が歩いている山へ通じる筋に集まってきていました。
ダマテ「・・・・・かなり早いな!!俺達の位置がバレてるかもしれない!!・・・走ろう!!ハク!!」
ダマテの掛け声と同時に山の方に走り出しました。
私達は生ぬるい温度の夜風を切り、全力で走りました。もう少しで山の入り口です。
走っているのですが、炎の塊の方が早く、私達に近づいて来ていました。
遠目で炎の塊の前の先頭がスクーターなのが分かりました。山までの一本道をどんどん登ってきています。
一体誰でしょうか・・・・。どう考えても仲間とは思えないのですが、相手はこんなに大勢いるのでしょうか。
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・・・・・・・・・・・・・
「見つけたぞお!!!!あそこだ!!!娘が居るぞ!!!」
大きな声が聞こえました。
ダマテ「きたっ!!ハク!!・・・・・」
ハク「えっ??!!・・・」
ダマテは急に私の横に来て、とっさに私のズボンのポケットに手を入れてきました。
ハク「ちょっと!!・・・・え?!何すんの?!」
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
「間違いない!!あいつらやっぱり山に向かってる!!」
「やっぱり山の方が隠れやすいと踏んだな!!!」
「俺が先だぞ!!女は先に俺だからな!!!」
「昔から狙ってたんだぞ!!やっとこの日が来た!!」
「俺にやらせろっ!!!」
「俺だ俺だー!!」
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・・・・・・・・・・・・
「ん?・・・・戻れ戻れ!!!全員戻れ戻れ!!!・・・なんだありゃあ!!!」
坂の上から
火の付いた軽トラックが猛スピードで坂の下の追ってくる連中に向かって降りてきていました。
ガタンガタンガタン!!!
ガタンガタンガタン!!!
ガタンガタンガタン!!!
「うわぁぁ!!!一旦戻れぇー--!!!!」
集まっていた炎の点はあっという間に散り散りになります。
暫くして坂の下から物凄い爆発音が聞こえました。
この時に気付きました。・・・・私達が坂の上から落とした軽トラックの火柱と、私の会社の方向からあがっている火柱を確認したのです・・・・。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
ハク「・・・ダマテ見た?!・・・・と・・・・島民だったよ今の!!・・・・・。私達を追いかけて来ていたのは間違いなく島民だった!!!だって聞こえたのはよく仕事で話をしていた近所のやまちゃんの声だったもん!!!なんで?!・・・なんで島のみんなが私達を追っかけて来るの?!なんで?!」
その場で頭を抱えて震えていました・・・・。
私はこの意味の分からない状況に疑問を感じました。何故なら、どう考えても、どう考えを巡らせても、全く理解が出来ないのです。今日まで仲良く過ごしてした人達がどうして夜になっていきなり手のひらを反すように、卑猥な言葉を投げかけながら追いかけて来るのでしょうか・・・・。今までの長い近所付き合いは、一体何だったのでしょうか・・・・・。仲の良いフリをしていただけだったのでしょうか・・・。
ダマテ「・・・・・・・。正直・・・俺も状況を受け止められてはいないが、とにかく急ごう。・・・軽トラの爆発で、少しだけ時間稼ぎになるはずだ。もう俺達に味方は居ない。それが今分かったぞ。」
ハク「・・・!!!!・・・・ノベタンやハネダやアリタは大丈夫かなぁ!!もしかして、みんな追いかけられてるんじゃない?!伝えなきゃ!!」
しかし・・・何故か今日は携帯電話の電波が入らず、連絡が出来ない状況でした。
ハク「・・・え?!なんで?!」
ダマテ「ハク!!あいつらの事がはもういいから!!行こう!!」
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坂の頂上にある会社の廃車置き場に差し掛かった時、さっき私の会社事務所から取った車の鍵をダマテは私のポケットから奪って車に乗り込みました。
そのまま2人で廃車を移動させる用に傍の空き地に置いていたガソリンタンクを荷台に乗せて、タンクを倒し、ギアーをニュートラルにして坂の上で固定していた車輪止めを外しました。
そのままダマテが火のついたジッポライターを遠投し荷台に放り込みました。
火炎瓶ではなく火炎車・・・・・。
私は島民に対して車を坂の下に落とすことにためらいがありましたが、兄貴分のダマテには一切のためらいがありませんでした。襲ってくる島民達に対してダマテは攻撃をしかけました。全ては私を守る為です。他意はありません。
気が動転してしまい、この火の海になっている街並を坂の上から見下ろす事しかできませんでした。
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ダマテ「・・何してるハク!!また直ぐ追手が来るから急ごう!!」
ハク「みんな・・・・・。」
私はダマテに強く手を引かれ、暗い森の闇に吸い込まれるように入っていきました。
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島民達が私達を狙っています。
もう何が起きても不思議な事はありませんでした。
ここを打開できなくては、もう私達に明日はありません。他の仲間達も心配ですが、打開できることを信じて信用し、私は兄貴分のダマテと共に闇に身を寄せる事にしました。
この永い夜は、後にも先にも私にとっては凄まじい恐怖でしかなく、現実世界に於いての本当の恐怖が蠢いている事を田舎者の私達に知らせました。
もう本当にここから逃げるしかない。
そう私は、父に誓いました。
続く