サラマンダー・スパイラル ~悲壮~

サラマンダー・スパイラル

これまでのお話はこちら

サラマンダー・スパイラル ~旅立ち~
これまでのお話 ↓ ※下記の続きです。 ※続きの作品ですので必ず読んでからこちらをお読みください。 駅内にあるうどん屋でうどんを食っているスーツ姿のにしま。 にしま「ズルズル!!・・・」 大将「...
サラマンダー・スパイラル ~白色ガール~
前回は ↓ 町を越え、山を越え、町を越え。 みなみの運転する車で、市内の町はずれにある雑居ビル街に到着しました。 市内には何度か遊びに来たことがありますが、ここはあまり馴染みのない場所でした。 目標のビルの...
サラマンダー・スパイラル ~人間の渦~
これまでのお話はこちら ↓ カツ・・・カツ・・・・ カツ・・・カツ・・・・・ ・・・・・ 「助けて下さいじゃねぇだろこの野郎ぉ!!!」 ドンガラガッシャーン!!!! 螺旋階段を登り、4F...
サラマンダー・スパイラル ~人となり~
これまでのお話はこちら ↓ それから、ああでもないこうでもないと、暫く仕事についての話をみなみとしていましたが、結局その日は他の社員は誰も帰って来ませんでした。 チュンさんも長引いたので直帰すると連絡が有りまし...
サラマンダー・スパイラル ~顔と表情~
これまでのお話はこちら ↓ 焼き肉「チャン太」おすすめの塩タンとハラミを堪能しました。 肉厚でジューシーな旨味で口の中が一杯になります。 にしま「滅茶苦茶美味い!!ナニコレ?!」 みなみ「だ...
サラマンダー・スパイラル ~俺達のリーダー~
これまでのお話はこちら ↓ きたのに連れられて、2ブロック先にある繁華街のほぼど真ん中にあるきたのの経営する店に入るにしま、みなみ、ハクの3人。 「DORA」と書かれた看板を見上げる3人。 ハク「...
サラマンダー・スパイラル ~生業~
これまでのお話はこちら ↓ みなみ「それじゃあ、公務員と一般の仕事のどこが違うのですか?」 天井がさほど高く無い、古めかしいオーラス興業の事務所で初老男性に、仕事内容について説明しているみなみの...
サラマンダー・スパイラル ~立ち直る男~
これまでのお話はこちら ↓ その日、みなみは書類提出の為取引先の工場に行かなければならなかったのですが、どうしても外せない用事があり、その書類を入社前インターン中のまだパート社員の身であるポンに託しま...
サラマンダー・スパイラル ~過渡期~
これまでのお話はこちら ↓ 駅の掲示板の前に居るにしま・・・。 みなみはポンを連れてどこかに別の場所へ行ってしまいました。 この掲示板には、アルバイトを主とした求人情報が載っています。...
サラマンダー・スパイラル ~同業の蛇~
これまでのお話はこちら ↓ にしま「ご馳走様でした!」 ハツモト「これからも色々と宜しくな。特に頼むぞにしま。みなみの事を宜しくな」 本当にいい話を聞くことが出来ました。 幹部の...
サラマンダー・スパイラル ~隠れ家の主~
これまでのお話はこちら ↓ 螺旋階段を勢いよく登る4人・・・・。 逃げていました。 3Fに着き、みなみがフロアに入ります。 みなみ「・・・・もう少しでセーフゾーンだ。」 ...
サラマンダー・スパイラル ~南と北野~
これまでのお話はこちら ↓ それから何日か経ちました。 何事も無かったかのように俺達は普段の仕事を続けていました。相変わらず駅での求人募集については上手く行っておらず、テコ入れが必要...
サラマンダー・スパイラル ~螺旋~
これまでのお話はこちら ↓ 黒いSUV車の後部座席に乗っているみなみ・・・・。 みなみは、きたのの部下と同行していました。 みなみ「しかし初めて見る顔だな。きたののとこ...
サラマンダー・スパイラル ~信念と是正~
これまでのお話はこちら ↓ それから何日か、日々が過ぎていきました。 鏡の前でスーツを着ているにしま。 スーツと靴を新調し、気分一新頑張ろう。これは冬物のスーツ。また夏...
サラマンダー・スパイラル ~守護~
これまでのお話はこちら ↓ カンの事務所で3名の男達が座らされて、後ろから抑えつけられていました。 アシメの男「・・・兄貴!勘弁して下さい!自分が間違ってました!!バキョウ...

 

 

オカがカンに電話をする7分前の出来事・・・・・。

 

 

港を行き交う船を眺めながらタバコを吸っているオカの姿がありました。

 

オカ(しかし・・・・ここまで話が広がってるなんて・・・バキョウの野郎、完全に会社を潰そうとしてたな・・・・。店の経営については才が有ったが、あの野郎にそんな人望が有るようには見えなかったけどな・・・。)

 

頭を掻き、これまであった事を思い出していました。

 

 

直ぐ近くの車中でハンドルを握り待機しているソウマ。

 

 

ソウマ(・・・・今頃、カンの兄貴はリューの所へ行ってるはずだ・・・。)

 

疲労困憊でした。今回の事で、内務的な役割であるオカとソウマは毎日東奔西走していました。しかし、会社が危ない状況なので弱音を吐いている場合ではありませんでした。自分たちの進退ですらも大きく左右される事件と向き合っているからです。

 

これがどうでもいいとなると、もう自分の立場などあっという間に消し飛んでしまいます。

 

ソウマ「・・・・ん?・・・・」

 

助手席の下に少し見えている茶色の革の取っ手。

 

ソウマ「なんだこれは?・・・・」

 

運転席から手を伸ばして助手席下部にあった革の取っ手を取りました。

 

ソウマ「・・・これは・・・バキョウが持っていたカバンか?・・・・。」

 

カバンを開けると札束が入っていました。

 

ソウマ(・・・この金で逃げようと思ったんだろうな・・・・。・・・これも仕事だからな・・・・悪く思うなよ・・・・。)

 

札束を取り出し、奥を確認しました。

 

ピッ!!

 

 

ソウマ「・・・・」

 

・・・・・・・・・

 

バーン!!!

 

ドカーーン!!!

 

 

 

バッグの中の札束を引き抜いた瞬間、凄まじい爆発が起こりました・・・。

 

車が爆発し、扉が吹き飛び、とても大きな火柱が上がりました。

 

 

オカ「うわっ!!!!・・・いきなりなんだ?!」

 

オカは港に突然発生した火柱を見守る事しか出来ませんでした。

 

確信しました・・・・・。

 

オカ「・・・・・・・・やりやがったな・・・。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

本日の仕事が終わり、急ぎ足で帰る一人の青年の姿がありました。。

 

 

リュー「少し・・・遅くなってしまった。」

 

今日の売り上げを計算し、自分の事務所からカンの事務所に向かっていました。

 

・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・

 

カツカツカツ・・・・・

 

 

チー「あれ?・・・・リュー???リューじゃん♪」

 

たまたま、帰りの時間が被ったようで、仕事帰りのチーと出会いました。

 

リュー「おっ・・・・チーか。」

 

チー「お疲れ様。あんたもう、ご飯食べた?」

 

リュー「まだだよ。今日はお酒しかまだ口に入れてない。」

 

チー「お店・・ラーメンくらいしか開いてないし・・・どう?私んちで食べてく??」

 

リュー「え?・・・どうしようかな?・・・」(兄貴のとこ寄らないといけないんだけどな・・・・。)

 

チー「いいから、行こうよ♪」

 

チーはリューの腕に抱きつき、歩き始めました。

 

リュー「おい、やめてって。恥ずかしいだろ・・・・」

 

チー「この時間、どうせ誰も見てないからいいじゃん!!♪

 

 

少し郊外に向かって歩くと、オシャレな白色のマンションが見えて来ました。

 

リュー「え・・・お前、こんないいとこに住んでるの?・・・・・俺が住んでるとこより遥かにいいじゃん・・・。」

 

チー「まぁね♪オーラスに居た頃にだいぶ儲けたからね。ママなんかもっといいとこ住んでるよ。」

 

 

ルームキーを回すと、自動扉が開きました。その先のエレベータに乗り込み、4Fのチーの家に到着しました。

 

リュー「お邪魔しまぁす・・・・。」

 

チー「誰も居ないよ、私1人暮らしだから。」

 

2LDKのマンションでした。入ると廊下が有り、その先でリビング、寝室、衣裳部屋と分かれていました。

 

チーの部屋のリビングは殺風景でした。家具は全て白で統一されており、ソファー、机、椅子のみ。

 

チーはバッグをソファーの上に置いて、キッチンに立ちました。

 

20分後・・・・・

 

ネギ、ショウガ、卵を使ったうどんが出来上がりました。

 

リュー「うまそー!!・・・女の人の手料理なんか何年ぶりだろう!!いただきます!!」

 

チー「え?親は?」

 

リュー「もう随分会ってないなぁ、俺15歳の頃から1人なんだわ。・・・ズルズル!!・・・うっま!!美味いわチー!ありがとう!!」

 

笑顔で美味しそうにうどんを食べるリュー。それを嬉しそうにチーは眺めていました。

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

ズルズル!!・・・・・

 

・・・・・・・・・・

 

ズルズル!!・・・・・

 

ズルズル!!・・・・・

 

チー「・・・・そういえばあんたさ・・・向いてないんじゃないの?

 

リュー「うっ・・・・ゴホゴホ!!!!・・・・は?・・・なんだよ・・・何が?・・・・」

 

いきなりチーがそんな事を言い出すのでビックリして、思い切りむせてしまいました。

 

チー「何もきたのくんのとこでやらなくてもさ、別によくない?」

 

チーは電子タバコを吸い始めました。

 

リュー「・・・・・そう・・・見える?・・・・。」

 

チー「結局儲けても、アガリを抜かれるだけじゃない?最終的にバキョウと同じ目に遭うんじゃないかって、私はそう思ってね。」

 

焦るリュー・・・・。

 

リュー「チー・・・その名前出すな!!今はヤバい。聞かなかった事にしとくから。」

 

チー「いや、良いのよ私はどうなっても。やれるもんならやってみればいいわ。・・・リューがさ・・・末路が分かっているって言うなら、私と一緒にどこか行かない?どうせ結末が決まっているのだから、どうせなら誰も居ない所で2人で暮らそうよ。」

 

リューは箸を置きました・・・・・・。

 

これまでの人生を振り返りました、少し感慨深く、苦しかったことも楽しかったこともありました。

 

 

リュー「・・・・俺だって、もう終わりにしたいなぁって・・・・・思う事がたまにある。・・・・でもな・・・・憧れて、志したんだよなみんな・・・・。一度志したからには簡単に曲げる事は出来ない。・・・俺にまだ義と呼べるものがあるのなら、その義に反する行為なんだ。一緒にやってるロンも、その他の奴らも・・・みんな覚悟はしてる筈だ。俺だけが抜けて家族団らんみたいに良い思いをしようなんて、そんな事は・・・絶対に出来ない。最終的に自分がどうなるか分かっていたとしても、それが間近にあるからと言って、目を背ける事なんてもう・・・・逆に俺達はそれがあるから常に思い切り前を向いて進む事が出来るんだから。」

 

チー「リュー自身の考えがあるならそれは否定はしないんだけどさ、それって本当にあんたが考えた言葉なの?きたのくんに言わされてるんじゃなくて?

 

 

 

リュー「バキョウも、テンもアカマツも、・・それからソウマも・・・みんな・・・死んだ。・・・。でも、きっとどこかで全員覚悟してたと思う。覚悟していた時期が来ただけの話だ。チー・・・俺も恐らくいい死に方はしないだろう・・・。その時は俺の事は忘れてくれていい・・・・。末路が分かっている悲しいストーリーを進める事が美しいと思う考え方があるって、潔くみんな信じてたって事だけを忘れないで欲しい。・・・・居なくなってしまった連中と全く思い出が無いわけじゃあない。亡くなった今も家族だと俺は思ってる。悲しみは消えない。悲しいと思えば思うほど次から次へと居なくなった人間の考えが、まるで自分に備わっているかのように浮かんでくる。きっとそうやって残された同志達に継承されて行くんだよ・・・。・・・だからその人が生きてる生きていないはもう俺達にとっては関係ないことなのかもしれない。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

ふと正面を見ると・・・チーは少しだけ涙を流していたように見えました・・・・。

 

何故この何歳も年上の女性はこんなにも綺麗に泣く事が出来るのだろう・・・・・。

 

気持ちが少しでもわかったのでしょうか・・・・。

 

もう俺は涙を流すことが出来ない人間になってしまったのかもしれません。

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

チー「・・・えっでもちょっと待って、私が居なくなっても?(笑)」

 

 

リュー「それは仕方ない。」

 

チー「・・・・・・」

 

 

リュー「・・・・・・嘘♪こんな美味しいうどん作って貰ったし、チー以上の大泣きを俺はするかもしれない(笑)・・・でも俺が先だよきっと・・・・・・。・・・もういいやこんな話・・・。・・・・あぁそういえば!!今日初めてチーの後輩のにしまさんと話したよ。」

 

チー「あー、なんかにしまくんとかなり長時間話してたね。」

 

リュー「凄く面白くていい人だったわぁ。」

 

チー「そうね。いい子だよね。最近よくみなみくんとハクちゃんと私のお店来てくれるよ。」

 

リューは頬杖をついて、考えながら再び話し始めます。

 

リュー「でもね・・・・にしまさんずっと楽しそうではあったんだけど・・・・どこか悲しそうな雰囲気があるんだよなぁ・・。本人は持ち前のひょうきんな感じで、それを掻き消そうとしてるんだろうけどさ。」

 

チー「あー・・・・なんかそれ・・・・わからんでもない・・・。」

 

リュー「・・・多分だけど、・・・本当にとてつもない悲しみを知ってるからじゃないかなぁ?とか思ってね。・・・俺はなんだか今日話した時、そんな風に思ったわ。・・・あっ・・・・・うどんが伸びちゃう・・・・。」

 

チー「ふー--ん・・・・・。なるほどねぇ・・・・。あっそうだ、・・・今日もう遅いから泊まって行きなさいよ。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

カンの事務所にて。

 

数名の男達が集まっていました。

 

カン「間違いないんだな?・・・・」

 

オカ「はい、それしか考えられません。」

 

カン「幹部格の人間全員にこの件を伝えた。死ぬものぐるいで関わった人間を探せと。こっちも総出で行くぞ。もう・・・・どこにあいつのトラップが潜んでるかわからねぇぞ。」

 

 

カン以外の人間は下を向いていました。

 

 

オカが静寂の中口を開きました。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

オカ「・・・お・・れ・・」

 

カン「なんだ?なんか言ったか?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

無表情だったオカは天井を見上げ睨め付け、汗をほとばしらせながら叫びました。

 

 

オカ「俺はもう我慢できねぇ!!関わった奴ら全員見つけだしてやる!!・・・バキョウ・・・・何が俺に感謝する日が来るだ・・・・。お前の派閥の連中全員根絶やしにしてやるからな!!!お前が生きていても死んでいてもこれは俺にとってなんの関係もない!!ソウマの仇だ!!この俺の人生全てをかけて、・・・お前を本当の意味で討つ!!」

 

続く

タイトルとURLをコピーしました