うつし世と並行する世界へ②~パラレルワールド~

不思議な話

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うつし世と並行する世界へ ~パラレルワールド~
お疲れ様です。 常に楽しく愉快な出来事を追い求めています、エイルです。 本日はパラレルワールドについてのお話です。このワードを皆さんは詳しくご存じでしょうか。 異世界モノとか最近流行っていますので、少しは耳にしたこ...

 

食卓に座っている3人の姿がありました。

 

母親「けいちょ、隣のおじちゃんから聞いたよ。あんた昨日友達と丘の上の建物に行ったそうね。」

 

朝食の時、顔を合わすなり母親からそのような事を言われました。昨日私があの建物に行ったことが隣の家のおじちゃん経由で既に母親に伝わっていました。

 

けいちょ「行ったよ。それが何か悪い事でもあった??」

 

母親「・・・・おじちゃんからね、もうあそこには行かない方がいいって。・・・工事現場だから危ないからね。コバシ君達にもあなたの方からしっかり言っておいて。」

 

けいちょ「危ない?・・・外周をみんなでサイクリングしただけだよ。外周にはフェンスや仮囲いがちゃんとしてあって重機が入ってるのも入り口の一部分だけなんだぜ。どこが危ないんだよ。・・・・・・・もっと別の意味じゃなくて??・・・」

 

母親「外周だからって安全とは言えないでしょう?とにかく、行かないでね。」

 

母親がそういう事を言い始めると、ますますこちらとしては怪しく感じてしまうのでした。私の身の危険を心配する事以外にも何か別の意味が潜んでいるような、どうしてもそんな気持ちになってしまうのでした。

 

私の横に座っている妹のショウコが口を挟みました。

 

ショウコ「お兄ちゃん、色んな意味で危ないから行かない方がいいよ。何が建つのかまだ誰も知らされてないんだよ。あんな大きな敷地なのに、おかしいよ。どう考えてもおかしいって。だから行かない方がいいよ。普通に暮らそうよ。」

 

 

けいちょ「母さん、ショウコが言ってる事は本当?本当に誰も何が建設されるのか知らないのかな?俺は父さんから嘘を付いてはいけないと教えられたよ。・・・みんな嘘をついてないのかな?」

 

母「・・・何故あなたはそこまでして知りたがっているの?・・・・・・もぉいいから早くご飯を食べなさい。」

 

けいちょ「母さんは何か知ってるんだね。大人になれば嘘を付いても良い・・・俺達が住んでいる世界はそういう世界って事なんだね。わかったよ。そういう事なら分かったよ。」

 

ショウコ「そういう言い方やめなよお兄ちゃん。大人は大人の立場ってもんがあるんだからさ。」

 

けいちょ「あんな大きな敷地に建物が建つんだ。近くに住む俺達なら気になって当然でしょ。いいよ、お前は。気にならないんだったらいいよ。ほっといてくれよ。」

 

私は母親と妹に腹を立てながら、目の前にあるイモのソテーに不機嫌に食らいつきました。

 

母と妹と3人で普段暮らしていました。父は仕事で忙しく、単身赴任しており、年に数回しか家に帰ってくることはありませんでした。

 

好奇心高い男性である私の気持ちを分かってくれる人間が傍に居らず、相談する事も、先日見た敷地内の白い建物や白装束の集団の事も家族に打ち明けることが出来ませんでした。

 

 

 

駄菓子屋の前で集まるけいちょとコバシ・・・・・。

 

話は先日の白装束の人間達の事でした。

 

 

けいちょ「コバシは信じてくれてる?この前の話。」

 

 

コバシ「俺は勿論信じてるよ。イケモトやリクやフミオは怖がりなんだって。けいちょが言ってる話をまともに聞こうとしなかった。」

 

けいちょ「誰かに話した?」

 

コバシ「いや、話してないよ。話したら大人達に怒られそうだから、誰にも話してないよ。」

 

私ももし父親が家に居れば、敷地の中の話を話していたとは思います。恐らく私の気持ちを分かってくれると思ったからです。否定的な考えの母や妹のショウコに打ち明ける事はしませんでした。きっとこのコバシも私と同じような状況であったと思います。

 

仲間達とそれから何度も会いましたが、コバシ以外とは例の建物について話す事はありませんでした。

 

禁句のようになってしまっており、工事の大きな音がしても、工事の為の大きな重機が目の前を通ったとしても、全員その事に触れる事はなく過ごしていました。

 

 

けいちょ「なぁコバシ。」

 

コバシ「ん?どうした?」

 

けいちょ「なんか俺達ってさ毎日毎日、同じことをして過ごしてるよな。」

 

コバシ「そうだね。まぁそんなもんだろ。田舎だし。」

 

けいちょ「なんかこの俺達の生活って誰かに操作されてるとか思った事はないか?」

 

コバシ「うー-ん・・・そうなの??」

 

けいちょ「・・・もう、この暮らし・・・なんだか飽きちゃったよ俺は。」

 

スクっと立ち上がりました。気持ちは前向きで体が勝手に動くのです。目線はあの例の丘の上の建物。あそこには何かがあるはずです。大人達が子ども達に対して隠す何かがあるはずです。

 

 

けいちょ「コバシ、行こう。今夜、あの建物に行こう。」

 

コバシ「マジで??・・・・・」

 

けいちょ「いや、来たくなければ来なくてもいい。でも俺は行くぜ。」

 

コバシ「・・・・けいちょが行くなら俺も行く。」

 

・・・・・・

 

・・・・・・

 

イケモト「俺も行くよ。」

 

なんと駄菓子屋の裏側から友人のイケモトが出てきました。私とコバシの話を聞いていたようです。

 

けいちょ・コバシ「イケモト?!・・・」

 

イケモト「・・・けいちょが塀の中を覗いた日から、誰も例の建物の事を話さなくなったよな。俺も気になっちゃってさ。1人で色々調べて・・・誰かが再び話し始めるのを待ってたんだ。」

 

イケモトも交えて暫く話していましたが、彼も私と考えは同じで、同じ毎日を過ごす事に対して、嫌気がさしていたようです。

 

イケモト「あの建物は宗教法人??・・・じゃないかって噂が立ってるけど・・・・。」

 

けいちょ「あっそうなの?宗教法人の可能性があるのか・・・。」

 

コバシ「そういうことか・・・・。なんだか面白そうだな・・・。」

 

イケモトは調べてくれていました。

 

先日たまたま親戚と大勢で集まる事があり、子どもなのでやる事も特になかった為終始寝たふりをして大人達の話を聞いてくれていました。あくまでも全て噂話ではあったものの、内部で不思議な儀式をしているとか、あの建物に行けば神様に会う事が出来るとかそんな話を大人達はしていたと教えてくれました。

 

けいちょ「イケモトの話、面白そうじゃん。神様に会いに行こう。しっかり話して何も無い毎日を変えて貰おうぜ。」

 

コバシ「よぉし・・・・いつも一緒に遊んでるリクフミオはどうする?誘うか?この前外周を一緒にサイクリングした仲間だから、一言言っておいてもいいかとは思うんだけどさ。」

 

けいちょ「俺家近いから帰りにフミオを誘ってみるよ。リクはコバシに任せた。」

 

気持ちはとても清々しかったです。良く分からない建物に侵入する事・・・非常に危ない事をするのは分かっています。でも何故か私の心は何かが吹っ切れていました。

 

 

 

フミオの家に到着しました。

 

家の前の空き地で飼い犬と遊んでいるフミオ。

 

フミオ「・・・・あれ?・・・けいちょ?・・どうしたの?・・・」

 

けいちょ「フミオ、・・・・今夜いよいよ行こうと思ってる。あの建物に。お前はどうする?先日一緒にサイクリングした仲だ。誘っておこうと思って。」

 

フミオ「そうなんだ・・・・。僕はいいや・・・・。」

 

けいちょ「そっか。それならいいんだ。」

 

私はその場でしゃがんでフミオの飼い犬の頭を撫でました。この犬のことは赤ちゃんの時から知っています。公園の水道付近でダンボールに入れて捨てられており、拾った私達の仲間のフミオが飼う事になったのです。

 

けいちょ「元気か?この犬・・・相変わらず可愛いなぁ。」

 

この犬を見ていると私はこのままでもいい、平和の象徴であるこの犬を見るたびに心は洗われていました。

 

フミオ「けいちょはさ・・・今の生活が不満なの??」

 

けいちょ「は?・・・何言い出すんだ・・・。」

 

フミオ「だってそうなんでしょ?」

 

けいちょ「・・・・まぁ・・・不満は不満・・・。はっきり言って不満。」

 

フミオ「行ってみたらいいよ。もしかしたら新しい世界を見る事が出来るかもしれない。」

 

けいちょ「・・・フミオ・・・・。」

 

フミオ「あの大きな建物みたいなの?・・・・世界各地で建ってる。けいちょの話を聞いた時に確信したよ。」

 

けいちょ「そうなのか?・・そんな話初めて聞いたぞ・・・・。」

 

フミオ「神隠しって知ってる?・・・・」

 

けいちょ「ああ・・・なんとなく・・・・。」

 

フミオ「それが今世界各地で話題になってるんだって。でも・・・本当にその居なくなっちゃった人間達ってさ、本当にこの世から居なくなっちゃったのかな?別の世界に行って幸せに暮らしてるのかもしれないよ。」

 

けいちょ「・・フミオ・・・一緒に行こう・・・。」

 

フミオ「・・・僕はいけないよ。この犬が居るから。みんなで拾ったこの犬を置いてはいけないんだ。今の生活にも満足してるし。」

 

けいちょ「そうか。フミオはそうなんだな。」

 

フミオ「もしけいちょやコバシ達が居なくなって、身の回りの環境が変わって僕自身つまらくなってしまったら・・・その時は・・・・・。」

 

けいちょ「・・・・俺達の為に色々と調べてくれたんだな・・・。」

 

フミオ「行ってきなよ。けいちょが望んでいる新しい世界が待ってるかもしれない。もしかしたら望んでいる世界じゃないかもしれない。もし迷うなら行って欲しい。後悔するのであれば行って欲しい。」

 

普段無口であまり喋らない友人が、私の為にこんなに多くを語ってくれました。イケモトやフミオが言っている事が全て嘘でもそれでいいと思うことが出来ました。思う事が出来る決心がつきました。

 

私の地元で様々な噂が飛び交っている中、全く何もしないというのは私の中で間違っています。全員何もしないから毎日同じ日を過ごしてしまっているんです。この社会環境を大きく変えたいと思う人間がたった1人も居ないから毎日暇だと思ってしまうような暮らしなのです。

 

夜を待ち、決行します。

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