うつし世と並行する世界へ⑥~パラレルワールド~

不思議な話

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うつし世と並行する世界へ ~パラレルワールド~
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うつし世と並行する世界へ②~パラレルワールド~
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うつし世と並行する世界へ⑤~パラレルワールド~
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次の日になり、MRIを撮りましたが結果は異常なし。その後、私の担当医と面談をしていました。

 

医者「タクミくん・・・今簡単にお話を聞いた限りだと、記憶障害が君の頭の中で起こってるのかもしれないな。」

 

けいちょ「え??ほんとですか??」

 

医者「君は以前に外国で行方不明になって、見つかった頃は危篤状態。そこから治療で回復して帰国。帰国後に釣り中に倒れて、ここに運び込まれて約3ヵ月後の昨日の午前中に目が覚める。その比較的最近起こった外国に行ったことや釣り中に倒れた事も覚えてないんだよね?」

 

けいちょ「はい・・・・。もぉなんの事だか・・・・。そもそも外国というのは何のことでしょうか?昨日家族がお見舞いに来てくれたんですが、本当に誰か分かりませんでした。私の家族の顔ではありません。あと俺の記憶では、男性の名前の後ろにはちょ女性の名前の後ろに必ずコがついているのですがこれはどうなんですか?」

 

医者「うー-ん・・・・。名前というのは様々な種類があるから、必ずしもそうはいかないだろうね。でもねタクミ君、君の中でどんな事が起きていても私達は一緒に君と進んでいくから。それが私の役目だから。話せる範囲でいいから、もう少し詳しく君が知っているお話を私に教えてくれないだろうか。」

 

私はそこまで言ってくれる自分の担当医に、元々居た世界の事を伝えました。

 

自分が住む港町に急に白く大きな施設が建ったこと。私の家族や町の人間はその施設に対してタブーのような扱いをしていたこと。白装束の集団のこと。友人達と共に夜にその施設に忍び込んだこと。平屋で窓の無い長い廊下の多い施設だったこと。イケモトが白装束の人間達に殺されてしまったこと。地下の広い和室のこと。コバシという友人がその広い和室で消えてしまったこと。

 

起こった出来事の全ての事を私の担当医に話しました。

 

医者は私の話を聞くなり、額に手を当て黙り込んでしまいました。私の母親だと言っている女性も後ろの丸椅子で座って私の話を聞いていましたが、完全に何も言葉を発しなくなってしまいました。これはもう長い間眠っていたことや疲れが原因ではないという事をきっと悟ったんだと思います。

 

医者「・・・・・君は・・・もしかして違う世界から来たって事が言いたいのかな?」

 

けいちょ「そもそもタクミという名前ではなく、俺は・・・・・あれ??・・・・・」

 

あれ???名前はなんだったかな??・・・・俺の名前・・・・。

 

急に自分の名前が思い出せなくなってしまいました・・・・。

 

タクミ・・・・・そういえば俺はそんな名前だったのかな??・・・・

 

医者「今日はここまでにしとこう、タクミ君。一旦病室に戻って、お昼ご飯を食べて休むと良いよ。」

 

タクミ「はい・・・・・。そうします。少し頭が痛くなってきました・・・。」

 

医者「色々話してくれて本当にありがとう。また何かこちらから聞くことがあるかもしれないけど、話したくなければ話さなくてもいいからね。私も調べてみるからね。」

 

私は母親に連れられて元居た病室に戻りました。私はベッドで横になり、母親はベッドの横のパイプ椅子に腰かけました。

 

母親「タクミ・・・・ちょっとだけ、私の話聞いてくれる??」

 

タクミ「え?・・・・・うん・・・・。なに?・・・・」

 

母親「私はねあなたが目覚めてくれたから、それだけでいいのよ。本当にそれだけでいいのよ。起きてくれて良かった。本当に心からそう思ってる。友達と行った釣り中に倒れたって聞いた時はもう・・・私は頭の中が真っ白になってしまって何も考えられなくなってしまったのよ。・・・記憶はまたいつか戻ってくればいいかなとは思うけど、戻って来なければまたこれからみんなで楽しい思い出を作って行けばいいじゃない。ねぇタクミ、一緒に家で暮らしましょう。あなたが来たことがない家だと言ってもそれでいいのよ。これから自分の家になっていくのよ。私達もこれから家族になっていけばいい。」

 

母親は優しい笑顔でそのように答えました。

 

私にとってほぼ初対面の人間にここまで言われる・・・・。やはりこの人は私の母親なんだろうな・・・。

 

母親「あとそういえばね、ニカちゃん達が昼から来るって。私は一度おじいちゃんおばあちゃんに報告しに家に帰るけど、あなたの子どもの頃からの友達も一緒に来るから是非嫌がらずに会ってみて。・・・・凄くいい子ばかりだから、きっとすぐ仲良くなる。大丈夫だよ。怖がらないでね。」

 

母親は私を抱きしめました・・・。

 

これから・・・自分自身を探していかなくてはならない・・・。

 

この世界の住民になるには自分の見つけて行かなくてはいけないんだ。

 

 

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ニカ「タクミ、あなた本当に記憶が無いの?・・・私達・・・・結構長い事付き合ってるんだけどそれも思い出せないのかな?」

 

小麦色に焼けた肌に白い歯のニカは心配そうに私の顔を覗き込んでいました。こちらの世界の友人達がお見舞いに来てくれたのです。

 

ミズノ「おばちゃんから聞いたよ。でも目が覚めて本当に良かったわ。」

 

カイハラ「そうよね。元気そうで本当によかった。」

 

ニカちゃんは私との記憶がない事に少し残念がってはいましたが、みんな目が覚めた事に対してとても喜んでくれていました。

 

タクミ「えっと・・・その・・・・俺はどこで倒れたんでしょう?」

 

ニカ「タクミは外国で行方不明になるし、釣り中に倒れるし、本当にこの一年は大変だったね。」

 

カイハラ「倒れた場所は、みんなで釣りに行った先の渓流だよ。この4人で行ったんだけどね。急にタクミの姿が見えなくなって、慌てて探したら乗って来た車の付近で仰向けで倒れてたのよ。」

 

ミズノ「直ぐに救急車呼んだんだけど、場所が上手く伝えれなくてな。一度車に乗って山を下りて救急車と待ち合わせる感じになっちゃったんだけどな。」

 

ニカ「あれはホントにビックリした。死んだかと思って私なんか泣き出しちゃってさ。外国で一度居なくなっちゃった事もあって余計にね。でもよかったぁ・・・・・。」

 

ニカは凄く嬉しそうでいた。

 

タクミ「すいません・・・皆さんに迷惑かけてしまったんですね・・・。」

 

ミズノ「べ・・・別人だな(笑)その話し方は演技でやってると思えないぜ・・・・・。でもな、良いんだよお前が生きてさえいてくれたら。子どもの頃からずっと友達なんだ。これからも友達なんだからそれだけは変わらないよ。」

 

カイハラ「これからもよろしくね、タクミ。きっとこれから困ることがあると思うけど私達が全力でサポートするからね。」

 

ニカ「タクミの仕事先の人にこの前会ったんだけど、事情は分かってるから心配しなくて良いって言われてるよ。体が良くなったら一緒に挨拶しに行こうね。落ち着いたらまた釣りに行こう♪私が教えてあげるから♪タクミは私の事分からないと思うけど、私はどんなタクミでも大好きだからね♪一緒にまた思い出作って行こうね♪」

 

タクミ「みんな・・・・・・・。本当にありがとうございます・・・・。」

 

初対面なのに、あたたかくて。なんだかとてつもなく嬉しくて泣きそうでした。こちらに来てからはもう元の世界には戻れないとは思っていましたが、この世界で頑張ってやっていこうと、そう強く思うようになりました。

 

タクミという名前を受け入れてから自分の元の名前、忘れてしまいました。

 

 

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