前回までのうつし世と並行する世界へはこちら
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それから何日か月日が流れました。
私は家?に戻り、こちらの世界の家族と一緒に生活をスタートさせる事となったのです。
はじめはかなり気を使っており、かなり緊張していました。気を使わなくていいと言われましたがなかなかそれも暫くの間は難しい話でした。
しかしこちらの世界の父親も母親も優しく、居心地は良かったです。
向こうの世界では年齢は16歳でした。しかしこちらの世界での私は22歳。立派な大人でした。
自分の部屋に卒業アルバムというものがあり、若い頃の私の写真やミズノの写真がそこには載っていました。こちらの世界では学校というものがあり、そこでみんなで集まって勉強や遊びや運動をするそうです。
私のいた世界では学校というものは無く、家にあるTVで生活に必要な最低限の勉強をします。地域の人間とは、こちらである公民館のような施設があり、新しい住民との顔合わせや情報交換をしていました。
通貨も違い、こちらの世界では「円」というお金を使われているようでした。向こうの世界で駄菓子などを購入する時には「ペソ」という通貨を使っていました。こちらの世界でもペソという通貨は使われておりますが外国で使われているとの事でした。私が元居た世界では外国というものは聞いた事がありませんでした。世界のサイズとしてはこちらの世界の方がおおきそうでした。
あと一番驚いたのは主食です。ご飯という白い無数の小さな物体の集まりが主食だそうです。これが食べると滅茶苦茶美味しい。病院の看護師さんに聞きましたがパンとかパスタという主食もあるそうでした。これから食べ物が楽しみです。
以前居た世界ではイモが主食でした。こちらでいうジャガイモというものが私が食べ親しんできた味にとても近いです。
新しい事ばかりでしたが、新鮮で楽しい毎日でした。スマートホンという機械に連絡が来るニカと度々会うようになり、ニカの車でドライブをしたり、買い物に行ったり、ニカの手料理を食べさせて貰ったりしました。何もかも分からないので手取り足取り教えて貰っていました。
ニカ「毎回毎回ありがとうって(笑)・・・だって付き合ってるからね私達(笑)」
数か月後には職場に復帰しました。洋服屋さんでした。
私の上司は顎髭の似合うワイルドな店長でした。
店長「タクミ君、元気だった?詳しい話はニカちゃんから聞いてるからね。徐々に仕事覚えて行こう。私が全て教えてあげるからね。」
店長と、私と同じくらいの年齢の同僚の方が仕事を懇切丁寧に教えてくれました。
出会う人出会う人本当に優しかったです。こちらの世界には優しい人しか居ませんでした。
こちらの世界で生活していくうちに徐々に昔居た世界の事を忘れていきました。
タクミ「いらっしゃいませ。」
商品である洋服を畳んでいると、お客さんがお店に入ってきました。
お客さん「たくちゃん!大変だったな・・・・。」
当然会った事はありませんが、常連と思われるお客さんからもかなり心配されていたようで、元々のタクミさんはこの方とかなり良いお付き合いをしていたものと思われます。
元々私は何者だったのでしょうか・・・・・。ニカには前の世界の事を沢山話しましたが、徐々にその話題はなくなり、こちらの世界の普通の日常会話しかしなくなりました。
それから何年も何年も経ちました。
タクミ「結婚してください。」
床に跪いて、ニカに指輪を渡します。給料3か月分です。一生懸命働きました。
ニカ「・・・・もちろん!♪てか遅くない!?♪いつになったら・・・って思ってたよ!?♪・・・・というのは嘘で・・・・・楽しい家庭にしようね、タクミ♪ありがとう♪」
馴染みの飲食店の奥からミズノとカイハラは仮装して出てきます。
ミズノ・カイハラ「おめでとぉぉー--!!!!♪♪」
タクミ「・・・ミズノちょっと待って!!クラッカーがマジででかい!!」
ニカ「怖い怖い!!!」
パァーーーーン!!!!
幸せでした・・・・。この上なく幸せでした。
この頃になると、もう完全にこちら側の世界の人間になっていました。
昔の世界の事を思い出すのが徐々に難しくなってきていたのです。
それから更に何年か経過して、私とニカとの間に赤ちゃんが産まれました。
タクミ「可愛いねぇ♪」
ニカ「可愛い♪パパー仕事頑張ってねー♪」
ニカが赤ちゃんの手を取り、手を振る仕草をしていました。溺愛です。男の子です。
あぁ・・・なんて幸せなんだ・・・・・。
子どもを寝付かせた後、私はいつものように1人で食卓に座ってお茶を飲んでいました。
タクミ「ふー--・・・・最近仕事忙しくなってきたな・・・・・ん?・・・」
ふとスマホを見ると、見慣れないメールアドレスからメールが届きました。
タクミ「誰だこんな時間に・・・・・。」
私はメールを開きました。
件名:遅くに申し訳ございません
本文
突然のメール失礼いたします。
私、リョウゴと申します。タクミさんのEメールアドレスで間違いありませんでしたでしょうか?
私は決して怪しい物ではございません。削除操作などせず、このままこのメールを読んで頂けると幸いです。
タクミさんは、「けいちょ」というお名前をご存じでしょうか?
ここまで読んだ時、急にこの謎の名前を懐かしく感じました。
どこかで聞いた事があります・・・やけに親しみが沸くこの名前・・・・・。懐かしさすらあります・・・。これは一体誰の名前だ??・・・
もうお忘れかと思いますが、この名前はタクミさんが前に居た世界で使用していた名前です。
私は昔、タクミさんが居た世界に住んでいた者です。
タクミさんのメールアドレスをとある人間から聞きました。新生活が始まり、この度物凄く迷惑かと思いましたが、どうしてもタクミさんにお伝えしたい事がありましてメールさせて頂きました。
タクミさんがこれより先の話、聞きたくないと思われれば返信は不要でございます。
突然の事で大変申し訳ありません。
タクミ「・・・・・・・・・・」
私はもう過去の世界の事など忘れていました。
1つ心残りがあるとすれば・・・・・
友人コバシの存在・・・・。
このメールの主がコバシでしょうか・・・・・。
私は直ぐに返信をしました。
一緒にこちらの世界に入り込んだ友人が居たと思うのですが、元気でしょうか。お話というのが、もしその関係のお話であれば是非とも教えて頂きたいです。
直ぐにメールが返って来ました。
本文
返信ありがとうございます。
それでは、是非一度お会いしてお話出来たらと思います。
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
このメールを読んでから、ほぼ忘れていた前の世界の出来事が急に蘇ってきました。やけに頭が冴えるのです。
このメールの主は一体何を知っているというのでしょうか。どういう情報を持っているのかわかりませんが、一度会ってみようと思いました。ニカには内緒です。できたらコバシに関する話であって欲しいです。
或いはあの奇妙な集団のことなのか、施設の事なのか・・・。メールを読んで思い出したくらいの、うろ覚えでほぼ覚えていない状態です。ですが、向こうの家族の事も少し気がかりです。パラレルワールドの事を知っているのであれば詳しくそれらについても聞いてみる必要性があります。
今の生活にはとても満足していますが、自分の元居た世界とは何なのか、それを明らかにしていきたい気持ちが今になって出てきたのです。
このメールの主と会って、どうなるかわかりません。今の生活が無くなってしまうかもしれませんし、元の世界に戻されてしまう可能性も考えられます。
いよいよメールの主の元へ出発する日になりました。ニカに手紙を書いて出かけようと思います。
良い方向になるように願っています。
是非いい方向に話が進んでいくように願っていてください。
このお話をするのはこれで最後にしようと思います。これ以上話す事はありません。
子どもとニカの幸せを願いながら、私は車に乗り込み家の前の浜辺を眺めていました。
完



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